昨年よりメディア等でよく話題に上がるブロックチェーン技術。暗号通貨を含め、現在、様々な競合技術が乱立し、群雄割拠の様相を呈しています。本投稿では、そんなブロックチェーン技術のひとつであるEthereumの概要とその魅力について紹介します。
Ethereumの登場
Ethereum(イーサリアム)は、2013年にロシア生まれのプログラマー Vitalik Buterin によって発表された暗号通貨のひとつですが、広義的にはブロックチェーン上でスマートコントラクトを実現させる分散型アプリケーション(DApps)を構築するプラットフォームのことを指します。ビットコインの発明者「中本哲史」なる人物は、その名の通り日本人だとされていますが、様々な憶測が飛び交っており正体はわかっていません。
一方、Ethereum Foundationはスイスに拠点を置いているため、スイス発のブロックチェーン技術と言えるかと思います。永世中立国であるスイスは、牧歌的なイメージを持つ反面、世界の富裕層はスイスに財産を預けるといわれており、いわば世界の金庫としての顔も持っています。この辺の背景や金融システムの歴史を少しでも頭に入れておいてからEthereumを勉強すると面白いかと思います。
Ethereumの価格
次にiPhoneのアプリ「CoinCap」でEthereumの時価総額を見てみます。
Ethereumの通貨単位「ETH」(イーサ)は約11ドルとなっており、その上に位置するBitcoinの動向を見守りながら、首位の座を虎視眈々と狙っているかのようなポジションをキープしています。また、「ETC」はEthereum Classicの通貨単位ですが、EthereumにはETHとETCの2種類の通貨単位が存在します。これについては最初混乱するかと思いますが、2016年6月の発生した「The DAO attack」が発端となり、Ethereum Classicが誕生しました。詳しい経緯とEthereum Classicについては次のサイトが非常に参考になるかと思います。
DAO Attackの全貌解説!消えた360万ETH、原因や対策、その後【Bitcoinニュース】
https://coincheck.com/blog/1514
ETHとETCのメリットについてLet’s Talk Bitcoinで議論される
https://www.coin-portal.net/2016/08/12/11609/
Ethereumの世界
ここではEthereumに関連する多数の用語および派生プロジェクトの中から、いくつかを抜粋し簡単に説明します。
Ether
Ethereumネットワーク上で使用される暗号通貨単位(ETH)。「ether」という単語は、宇宙空間に存在し光の伝達を行う働きをする化学物質「エーテル」を指す意味でも使われています。
Gas
Etherの取引き、スマートコントラクト実行時に必要となる手数料。Gas(ガス)=燃料。
Ghost
ブロックの分岐が存在した場合に、どのブロックを選択するかを決定するプロトコル。
Mist
Ethereumの公式ウォレット。Ethereumで開発されたDAppsの複数のトークンを一元管理可能。
Swarm
Mistに組み込まれる静的ウェブホスティングに最適化されたP2Pデータストレージプロトコル。
(swarm = 分巣時の蜂の群れ)
Golem Project
https://golem.network/
Golem(ゴーレム)はブロックチェーン上で分散型演算処理ネットワークを構築し、強力なスーパーコンピュータを実現させようとするプロジェクトです。空いているコンピュータリソースの提供者には報酬を受け取れるような仕組みの実現を目指しており、プロジェクトのマイルストーンは「Brass Golem」「Clay Golemn」「Stone Golemn」「Iron Golem」の4段階で構成されています。
Augur
https://augur.net/
Ethereumのスマートコントラクトを活用した分散型の未来予測サービス。例えばスポーツの勝敗や選挙結果を予測して賭け事を行うことが可能です。賭け事なので賛否両論があるかもしれませんが、中央集権型の運営体が不要で参加者同士で構築する分散型取引となるため、ある意味フェアだといえます。また、「群衆の知恵」を活用し未来予測を通じて、より良い意思決定に役立てようとするのがコンセプトとなっています。Augurは「占い師」「予言者」の意味を持つ単語です。
Swarm City
https://swarm.city/
Ethereum上で構築された初のP2P型シェアリングトークンエコノミー。通貨は独自に開発したSWTを使用。
今後の動き
Ethereumの開発ロードマップは次のように4段階となっています。
Frontier 2015年7月リリース。ベータ版であり、開発者向けの実験的バージョン。
Homestead 2016年1月リリース。開発者向けのベータ版安定バージョン。
Metropolis 2017年半ばリリース予定。非開発者向けとなる正式版。
Serenity 2017年より開発に着手され、PoWからPoSへの移行が行われるとされる。
昨年の動きでは、まず大手コンサルのデロイトがEthereum基盤のブロックチェーンを提供するConsenSysと提携し、Ethereum上に銀行を構築するプランを発表しました。
また、今年に入ってからはエンタープライズ向けEthereumをリリースする予定との発表があり、メンバーにはJPモルガン、マイクロソフト、シスコなど大手企業が名を連ねています。EthereumはあらゆるIT技術と親和性が高く、技術資料も豊富なため、普及が加速する動きを見せています。乱立するブロックチェーン技術の中でも、注目株の筆頭だと言えるかもしれません。
まとめ
Ethereumのみならず、ブロックチェーン技術全般に言えることですが、新しい技術・概念・用語が次々と出現し、競合技術同士が生き残りをかけて激しい戦いを繰り広げている印象を受けます。その最新情報にキャッチアップすることは大変ではありますが、その技術に興味があれば、その学習は苦になるどころか楽しいものとなるに違いありません。そういった意味では、「エーテル」「ゴースト」「ゴーレム」など中世ファンタジー小説やロールプレイングゲームに登場するような名詞が登場し、神秘的で独特の世界観を持つ壮大で魅力的なプロジェクトが多数存在するEthereumは、ブロックチェーンの入り口としておすすめです。
以上、今回は入門向けの内容でしたが、次回はEthereumが実際に動く環境を構築したいと思います。
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